曲げ+ねじりの合成応力とは?軸設計で必須の計算方法と実務での注意点をわかりやすく解説

曲げねじり合成 設計者のためのノート
  1. 軸設計で必須の計算方法と実務での注意点を解説
  2. 1. なぜ「合成応力」で評価する必要があるのか?
    1. よくあるNG設計
  3. 2. 曲げ応力・ねじり応力のおさらい
    1. 曲げ応力 σ
    2. ねじり応力 τ
  4. 3. 曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス応力)
    1. ミーゼス相当応力の式
  5. 4. 設計での判定方法(実務フロー)
    1. 手順① 応力を個別に計算
    2. 手順② 合成応力を計算
    3. 手順③ 許容応力と比較
  6. 5. 例題(イメージ)
  7. 6. 設計現場でよくあるトラブル事例
    1. ① 曲げのみ評価 → 折損
    2. ② キー溝・段差で応力集中
    3. ③ 疲労破壊
  8. 7. 実務設計のチェックポイント
  9. 8. Excelツールを使うと一気に楽になる
  10. まとめ
  11. 曲げ+ねじり設計ミス事例集
  12. 事例①:曲げ応力だけで設計 → 軸が突然折損
    1. ■ 事象
    2. ■ 設計時の判断
    3. ■ 問題点
    4. ■ 正しい考え方
  13. 事例②:静的強度OK → 疲労破壊が早期発生
    1. ■ 事象
    2. ■ 設計時の判断
    3. ■ 問題点
    4. ■ 正しい考え方
  14. 事例③:キー溝を無視 → 断面欠損で破断
    1. ■ 事象
    2. ■ 設計時の判断
    3. ■ 問題点
    4. ■ 正しい考え方
  15. 事例④:中空軸で軽量化 → 剛性不足・過大たわみ
    1. ■ 事象
    2. ■ 設計時の判断
    3. ■ 問題点
    4. ■ 正しい考え方
  16. 事例⑤:起動トルクを見落とし → 想定外のNG判定
    1. ■ 事象
    2. ■ 設計時の判断
    3. ■ 問題点
    4. ■ 正しい考え方
  17. 事例⑥:安全率の意味を誤解 → 過信設計
    1. ■ 事象
    2. ■ 設計時の判断
    3. ■ 問題点
    4. ■ 正しい考え方
  18. 設計ミスを防ぐためのチェックリスト(要点)
  19. 実務では「自動計算ツール」が最強の防止策
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軸設計で必須の計算方法と実務での注意点を解説

回転軸・シャフト設計では、曲げ応力だけ/ねじり応力だけで設計するのは危険です。
実際の軸には多くの場合、

  • 荷重による 曲げ
  • 動力伝達による ねじり

同時に作用 しています。

この記事では、
曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス応力) の考え方と計算方法を、
設計現場でそのまま使えるレベルで解説します。


1. なぜ「合成応力」で評価する必要があるのか?

よくあるNG設計

  • 曲げ応力 → OK
  • ねじり応力 → OK
    なのに軸が折れる

原因はシンプルで、
応力は別々に作用せず「同時に重なって」材料を壊すからです。

そのため実務では、

曲げ応力 + ねじり応力を合成した等価応力

で評価する必要があります。


2. 曲げ応力・ねじり応力のおさらい

曲げ応力 σ

σ=MZ\sigma = \frac{M}{Z}σ=ZM​

  • MMM:曲げモーメント [N·mm]
  • ZZZ:断面係数 [mm³]

ねじり応力 τ

τ=TZp\tau = \frac{T}{Z_p}τ=Zp​T​

  • TTT:トルク [N·mm]
  • ZpZ_pZp​:極断面係数 [mm³]

3. 曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス応力)

ミーゼス相当応力の式

σe=σ2+3τ2\sigma_e = \sqrt{\sigma^2 + 3\tau^2}σe​=σ2+3τ2​

  • σ\sigmaσ:曲げ応力
  • τ\tauτ:ねじり応力
  • σe\sigma_eσe​:合成応力(等価応力)

👉 この σe を材料の許容応力と比較して判定します。


4. 設計での判定方法(実務フロー)

手順① 応力を個別に計算

  • 曲げ応力 σ
  • ねじり応力 τ

手順② 合成応力を計算

σe=σ2+3τ2\sigma_e = \sqrt{\sigma^2 + 3\tau^2}σe​=σ2+3τ2​

手順③ 許容応力と比較

σeσBn\sigma_e \le \frac{\sigma_B}{n}σe​≤nσB​​

  • σB\sigma_BσB​:引張強さ
  • nnn:安全率(2~3以上が一般的)

5. 例題(イメージ)

  • 曲げ応力:σ = 80 MPa
  • ねじり応力:τ = 40 MPa

σe=802+3×402=6400+4800=11200106 MPa\sigma_e = \sqrt{80^2 + 3 \times 40^2} = \sqrt{6400 + 4800} = \sqrt{11200} \approx 106 \text{ MPa}σe​=802+3×402​=6400+4800​=11200​≈106 MPa

👉 単純加算(80+40=120)ではない点が重要


6. 設計現場でよくあるトラブル事例

① 曲げのみ評価 → 折損

  • 動力軸でねじりを無視
  • 起動・停止時トルクを考慮していない

② キー溝・段差で応力集中

  • 合成応力 × 応力集中係数
  • 計算値より実応力が大幅に増加

③ 疲労破壊

  • 最大応力のみ評価
  • 応力振幅・繰返しを無視

7. 実務設計のチェックポイント

✅ 最大トルク(起動・異常時)を使う
✅ 曲げ+ねじりは 必ず合成応力で評価
✅ キー溝・段差・はめあい部は要注意
✅ 疲労が絡む場合は SN 曲線を確認


8. Excelツールを使うと一気に楽になる

手計算はミスが出やすく、
設計レビューや報告書にも不向きです。

👉 Excel自動計算ツールを使えば

  • 入力 → 自動で σ・τ・σe 算出
  • OK / NG 判定
  • 設計報告書への転記も簡単

まとめ

  • 実際の軸は 曲げ+ねじりが同時に作用
  • 合成応力(ミーゼス応力)で評価するのが必須
  • 個別にOKでも「合成NG」はよくある
  • Excelツールでの自動計算が実務向き

曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス)まで連動して、OK/NG判定+必要最小軸径まで自動算出できる Excel

  • ✅ 曲げ応力 σ
  • ✅ ねじり応力 τ
  • ✅ 合成応力(ミーゼス)σe
  • ✅ OK / NG 判定(σe ≤ σy/n)
  • ✅ 必要最小軸径 d_req(中実円軸)

こちらからダウンロードできます:
bending_torsion_vonmises_tool

曲げ+ねじり設計ミス事例集

― 軸設計で“よくある失敗”と正しい設計判断 ―

回転軸・シャフト設計において、曲げとねじりを同時に受ける状態は非常に一般的です。
しかし実務では、どちらか一方しか評価せず、想定外の破損・変形トラブルにつながるケースが後を絶ちません。

本記事では、実際の設計現場で頻発するミス事例を通して、

  • なぜ失敗したのか
  • どこを見落としたのか
  • どうすれば防げたのか

を、設計者目線で解説します。


事例①:曲げ応力だけで設計 → 軸が突然折損

■ 事象

  • 使用中に軸がねじれるように破断
  • 破断面は45°方向(せん断破壊)

■ 設計時の判断

  • 曲げモーメントから曲げ応力 σ のみ評価
  • ねじりトルクは「小さいから問題ない」と判断

■ 問題点

  • 曲げ+ねじりの合成応力(ミーゼス応力)を未評価
  • 実際の最大応力は単独評価より大きかった

■ 正しい考え方

合成応力は次式で評価すべき:σe=σ2+3τ2\sigma_e = \sqrt{\sigma^2 + 3\tau^2}σe​=σ2+3τ2​

ねじりが小さくても無視してはいけない


事例②:静的強度OK → 疲労破壊が早期発生

■ 事象

  • 数万回の運転で軸が破断
  • 最大応力は許容値以下だった

■ 設計時の判断

  • 最大応力(σe)だけで安全率を判断
  • 繰返し荷重を深く考慮しなかった

■ 問題点

  • 応力振幅・平均応力を未評価
  • 曲げ+ねじりの繰返しが疲労を加速

■ 正しい考え方

  • SN曲線による疲労設計
  • 特に回転軸では疲労が支配的

事例③:キー溝を無視 → 断面欠損で破断

■ 事象

  • キー溝部から破断
  • 設計計算では余裕があったはず

■ 設計時の判断

  • 軸径を「中実円」として計算
  • キー溝の影響を考慮しなかった

■ 問題点

  • 実際の断面係数・極断面係数が低下
  • 応力集中係数 Kt を無視

■ 正しい考え方

  • キー溝あり → 有効断面で再計算
  • 必要に応じて軸径アップ or フィレット追加

事例④:中空軸で軽量化 → 剛性不足・過大たわみ

■ 事象

  • 振動増大、異音発生
  • 軸自体は破断していない

■ 設計時の判断

  • 強度計算(σe)はOK
  • 軽量化目的で中空化

■ 問題点

  • たわみ(剛性)評価をしていない
  • 断面二次モーメント I が大幅低下

■ 正しい考え方

  • 強度と剛性は別物
  • 曲げたわみ計算も必須

事例⑤:起動トルクを見落とし → 想定外のNG判定

■ 事象

  • 通常運転は問題なし
  • 起動時に破損

■ 設計時の判断

  • 定常トルクのみを使用
  • 起動・停止条件を考慮しなかった

■ 問題点

  • 起動トルクは定常の2〜3倍以上になることも

■ 正しい考え方

  • 最大トルク条件で設計
  • 特にモータ直結軸は要注意

事例⑥:安全率の意味を誤解 → 過信設計

■ 事象

  • 「安全率3だから大丈夫」のはずが破損

■ 設計時の判断

  • 曲げ応力だけに安全率をかけた

■ 問題点

  • 合成応力に対する安全率ではない
  • 評価対象が間違っている

■ 正しい考え方

  • 安全率は“評価対象”が正しくて初めて意味を持つ
  • σe ≤ σy / n で判断

設計ミスを防ぐためのチェックリスト(要点)

  • □ 曲げ+ねじりを必ず合成応力で評価
  • □ 起動・非常時トルクを含めているか
  • □ キー溝・段差の断面欠損を考慮したか
  • □ 疲労(繰返し)を見ているか
  • □ 強度だけでなく剛性(たわみ)も評価したか

実務では「自動計算ツール」が最強の防止策

今回の記事と連動した Excel自動計算ツール では、

  • 曲げ応力
  • ねじり応力
  • 合成応力(ミーゼス)
  • OK / NG 判定
  • 必要最小軸径

入力するだけで自動算出 できます。

👉「考え漏れ」を仕組みで防ぐことが、設計品質向上への最短ルートです。

曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス)まで連動して、OK/NG判定+必要最小軸径まで自動算出できる Excel

  • ✅ 曲げ応力 σ
  • ✅ ねじり応力 τ
  • ✅ 合成応力(ミーゼス)σe
  • ✅ OK / NG 判定(σe ≤ σy/n)
  • ✅ 必要最小軸径 d_req(中実円軸)

こちらからダウンロードできます:
bending_torsion_vonmises_tool

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