- 軸設計で必須の計算方法と実務での注意点を解説
- 1. なぜ「合成応力」で評価する必要があるのか?
- 2. 曲げ応力・ねじり応力のおさらい
- 3. 曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス応力)
- 4. 設計での判定方法(実務フロー)
- 5. 例題(イメージ)
- 6. 設計現場でよくあるトラブル事例
- 7. 実務設計のチェックポイント
- 8. Excelツールを使うと一気に楽になる
- まとめ
- 曲げ+ねじり設計ミス事例集
- 事例①:曲げ応力だけで設計 → 軸が突然折損
- 事例②:静的強度OK → 疲労破壊が早期発生
- 事例③:キー溝を無視 → 断面欠損で破断
- 事例④:中空軸で軽量化 → 剛性不足・過大たわみ
- 事例⑤:起動トルクを見落とし → 想定外のNG判定
- 事例⑥:安全率の意味を誤解 → 過信設計
- 設計ミスを防ぐためのチェックリスト(要点)
- 実務では「自動計算ツール」が最強の防止策
軸設計で必須の計算方法と実務での注意点を解説
回転軸・シャフト設計では、曲げ応力だけ/ねじり応力だけで設計するのは危険です。
実際の軸には多くの場合、
- 荷重による 曲げ
- 動力伝達による ねじり
が 同時に作用 しています。
この記事では、
曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス応力) の考え方と計算方法を、
設計現場でそのまま使えるレベルで解説します。
1. なぜ「合成応力」で評価する必要があるのか?
よくあるNG設計
- 曲げ応力 → OK
- ねじり応力 → OK
→ なのに軸が折れる
原因はシンプルで、
応力は別々に作用せず「同時に重なって」材料を壊すからです。
そのため実務では、
曲げ応力 + ねじり応力を合成した等価応力
で評価する必要があります。
2. 曲げ応力・ねじり応力のおさらい
曲げ応力 σ
σ=ZM
- M:曲げモーメント [N·mm]
- Z:断面係数 [mm³]
ねじり応力 τ
τ=ZpT
- T:トルク [N·mm]
- Zp:極断面係数 [mm³]
3. 曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス応力)
ミーゼス相当応力の式
σe=σ2+3τ2
- σ:曲げ応力
- τ:ねじり応力
- σe:合成応力(等価応力)
👉 この σe を材料の許容応力と比較して判定します。
4. 設計での判定方法(実務フロー)
手順① 応力を個別に計算
- 曲げ応力 σ
- ねじり応力 τ
手順② 合成応力を計算
σe=σ2+3τ2
手順③ 許容応力と比較
σe≤nσB
- σB:引張強さ
- n:安全率(2~3以上が一般的)
5. 例題(イメージ)
- 曲げ応力:σ = 80 MPa
- ねじり応力:τ = 40 MPa
σe=802+3×402=6400+4800=11200≈106 MPa
👉 単純加算(80+40=120)ではない点が重要
6. 設計現場でよくあるトラブル事例
① 曲げのみ評価 → 折損
- 動力軸でねじりを無視
- 起動・停止時トルクを考慮していない
② キー溝・段差で応力集中
- 合成応力 × 応力集中係数
- 計算値より実応力が大幅に増加
③ 疲労破壊
- 最大応力のみ評価
- 応力振幅・繰返しを無視
7. 実務設計のチェックポイント
✅ 最大トルク(起動・異常時)を使う
✅ 曲げ+ねじりは 必ず合成応力で評価
✅ キー溝・段差・はめあい部は要注意
✅ 疲労が絡む場合は SN 曲線を確認
8. Excelツールを使うと一気に楽になる
手計算はミスが出やすく、
設計レビューや報告書にも不向きです。
👉 Excel自動計算ツールを使えば
- 入力 → 自動で σ・τ・σe 算出
- OK / NG 判定
- 設計報告書への転記も簡単
まとめ
- 実際の軸は 曲げ+ねじりが同時に作用
- 合成応力(ミーゼス応力)で評価するのが必須
- 個別にOKでも「合成NG」はよくある
- Excelツールでの自動計算が実務向き
曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス)まで連動して、OK/NG判定+必要最小軸径まで自動算出できる Excel
- ✅ 曲げ応力 σ
- ✅ ねじり応力 τ
- ✅ 合成応力(ミーゼス)σe
- ✅ OK / NG 判定(σe ≤ σy/n)
- ✅ 必要最小軸径 d_req(中実円軸)
こちらからダウンロードできます:
bending_torsion_vonmises_tool

曲げ+ねじり設計ミス事例集
― 軸設計で“よくある失敗”と正しい設計判断 ―
回転軸・シャフト設計において、曲げとねじりを同時に受ける状態は非常に一般的です。
しかし実務では、どちらか一方しか評価せず、想定外の破損・変形トラブルにつながるケースが後を絶ちません。
本記事では、実際の設計現場で頻発するミス事例を通して、
- なぜ失敗したのか
- どこを見落としたのか
- どうすれば防げたのか
を、設計者目線で解説します。
事例①:曲げ応力だけで設計 → 軸が突然折損
■ 事象
- 使用中に軸がねじれるように破断
- 破断面は45°方向(せん断破壊)
■ 設計時の判断
- 曲げモーメントから曲げ応力 σ のみ評価
- ねじりトルクは「小さいから問題ない」と判断
■ 問題点
- 曲げ+ねじりの合成応力(ミーゼス応力)を未評価
- 実際の最大応力は単独評価より大きかった
■ 正しい考え方
合成応力は次式で評価すべき:σe=σ2+3τ2
→ ねじりが小さくても無視してはいけない
事例②:静的強度OK → 疲労破壊が早期発生
■ 事象
- 数万回の運転で軸が破断
- 最大応力は許容値以下だった
■ 設計時の判断
- 最大応力(σe)だけで安全率を判断
- 繰返し荷重を深く考慮しなかった
■ 問題点
- 応力振幅・平均応力を未評価
- 曲げ+ねじりの繰返しが疲労を加速
■ 正しい考え方
- SN曲線による疲労設計
- 特に回転軸では疲労が支配的
事例③:キー溝を無視 → 断面欠損で破断
■ 事象
- キー溝部から破断
- 設計計算では余裕があったはず
■ 設計時の判断
- 軸径を「中実円」として計算
- キー溝の影響を考慮しなかった
■ 問題点
- 実際の断面係数・極断面係数が低下
- 応力集中係数 Kt を無視
■ 正しい考え方
- キー溝あり → 有効断面で再計算
- 必要に応じて軸径アップ or フィレット追加
事例④:中空軸で軽量化 → 剛性不足・過大たわみ
■ 事象
- 振動増大、異音発生
- 軸自体は破断していない
■ 設計時の判断
- 強度計算(σe)はOK
- 軽量化目的で中空化
■ 問題点
- たわみ(剛性)評価をしていない
- 断面二次モーメント I が大幅低下
■ 正しい考え方
- 強度と剛性は別物
- 曲げたわみ計算も必須
事例⑤:起動トルクを見落とし → 想定外のNG判定
■ 事象
- 通常運転は問題なし
- 起動時に破損
■ 設計時の判断
- 定常トルクのみを使用
- 起動・停止条件を考慮しなかった
■ 問題点
- 起動トルクは定常の2〜3倍以上になることも
■ 正しい考え方
- 最大トルク条件で設計
- 特にモータ直結軸は要注意
事例⑥:安全率の意味を誤解 → 過信設計
■ 事象
- 「安全率3だから大丈夫」のはずが破損
■ 設計時の判断
- 曲げ応力だけに安全率をかけた
■ 問題点
- 合成応力に対する安全率ではない
- 評価対象が間違っている
■ 正しい考え方
- 安全率は“評価対象”が正しくて初めて意味を持つ
- σe ≤ σy / n で判断
設計ミスを防ぐためのチェックリスト(要点)
- □ 曲げ+ねじりを必ず合成応力で評価
- □ 起動・非常時トルクを含めているか
- □ キー溝・段差の断面欠損を考慮したか
- □ 疲労(繰返し)を見ているか
- □ 強度だけでなく剛性(たわみ)も評価したか
実務では「自動計算ツール」が最強の防止策
今回の記事と連動した Excel自動計算ツール では、
- 曲げ応力
- ねじり応力
- 合成応力(ミーゼス)
- OK / NG 判定
- 必要最小軸径
を 入力するだけで自動算出 できます。
👉「考え漏れ」を仕組みで防ぐことが、設計品質向上への最短ルートです。
曲げ+ねじり合成応力(ミーゼス)まで連動して、OK/NG判定+必要最小軸径まで自動算出できる Excel
- ✅ 曲げ応力 σ
- ✅ ねじり応力 τ
- ✅ 合成応力(ミーゼス)σe
- ✅ OK / NG 判定(σe ≤ σy/n)
- ✅ 必要最小軸径 d_req(中実円軸)
こちらからダウンロードできます:
bending_torsion_vonmises_tool


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