ねじり応力とトルクの関係とは?
回転軸やシャフトを設計する際、トルクによって発生するねじり応力の評価は欠かせません。
ねじり応力の見積りを誤ると、軸のねじ切れ・塑性変形・疲労破壊といった重大トラブルにつながります。
本記事では、
- ねじり応力の基本式
- トルクと応力の関係
- 軸強度計算の実務ポイント
を設計者目線で解説します。
ねじり応力が発生するメカニズム
軸にトルク T が作用すると、断面内にはせん断応力(ねじり応力)τ が発生します。
- 軸中心:応力 0
- 外周部:応力 最大
つまり、最も危険なのは軸の外周部です。
ねじり応力の基本計算式
一般式
τ=JT⋅r
- τ:ねじり応力[MPa]
- T:トルク[N·mm]
- r:半径[mm]
- J:極断面二次モーメント[mm⁴]
実務でよく使う簡易式(円形軸)
円形軸の場合、次の形がよく使われます。τmax=ZpT
- τₘₐₓ:最大ねじり応力
- Zp:極断面係数
極断面係数(中実円軸)
Zp=16πd3
トルクと軸径の関係(重要)
同じトルクでも、
- 軸径が小さい → 応力は急増
- 軸径が少し大きい → 応力は大幅に低下
👉 ねじり応力は軸径の3乗に反比例
👉 軸径変更は非常に効果的な対策
許容ねじり応力の考え方
一般的には以下を基準にします。τallow=3⋅SFσy
- σy:材料の降伏応力
- SF:安全率(1.5〜3程度)
※ ミーゼスの降伏条件に基づく考え方
曲げ+ねじりが同時にかかる場合(実務では多い)
実際の軸では、
- 曲げ応力 σ
- ねじり応力 τ
が同時に作用します。
この場合は、ミーゼス相当応力で評価します。σe=σ2+3τ2
👉 ねじり単独でOKでも、
👉 曲げを含めるとアウトになるケースは非常に多い
設計トラブル事例(よくある失敗)
① トルクのみで設計した結果、折損
- 曲げ応力を無視
- 段付き部で応力集中
→ 使用中にシャフト折損
② 軸径ギリギリ設計で疲労破壊
- 静的強度はOK
- 繰返しトルクで疲労破壊
👉 最大応力だけでなく、応力振幅も要チェック
設計時のチェックポイントまとめ
- トルクからねじり応力を正しく算出しているか
- 極断面係数を正しく使っているか
- 曲げとの合成応力を評価しているか
- 安全率は用途に合っているか
- 段差・キー溝・止め輪溝の応力集中を考慮しているか
まとめ
ねじり応力とトルクの関係は、
軸設計の中でも最重要テーマの一つです。
- 式を知っているだけでは不十分
- 「どこが危険か」「何を見落としやすいか」を理解することが大切
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PDF内容
- トルクの定義と設計上の意味
- ねじり応力の基本式(τ = T / Zp)
- 極断面係数の考え方
- 許容ねじり応力と安全率の目安
- 設計トラブル事例(折損・応力集中・疲労)
- 実務設計でのチェックポイント
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(Excel)torsion_stress_calc_linked.xlsx入力計算レポート

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