― 初級者がやりがちな設計ミス10選 ―
機械設計のレビューでは、
「計算が合っているか」よりも先に 設計の考え方・抜け漏れ が見られています。
特に若手・初級者の図面では、
毎回のように指摘される“共通ミス” が存在します。
この記事では、
- 初級者がやりがちな設計ミス
- レビューで必ずチェックされるポイント
- なぜそれが問題になるのか
を 実務目線で10項目 解説します。
初級者がやりがちな設計ミス10選
① 強度計算の前提条件が曖昧
よくある例
- 最大荷重ではなく「通常時の荷重」で計算
- 起動・停止時のトルクを考慮していない
- 異常時（噛み込み・衝突）を無視
レビューでの指摘
「この荷重条件、本当に最大？」
👉 計算式よりも“条件設定”が最重要
ここが曖昧だと、どんな計算も無意味になります。
② 曲げだけ／ねじりだけで評価している
よくある例
- 軸を「曲げ応力のみ」で設計
- トルクがあるのにねじりを無視
レビューでの指摘
「曲げ＋ねじりの合成応力で見てる？」
👉 実際の軸は 同時に応力が作用
ミーゼス応力での評価が必須です。
③ 安全率の根拠が説明できない
よくある例
- とりあえず「安全率3」
- 前の図面をそのまま踏襲
レビューでの指摘
「なぜこの安全率？」
👉 安全率は
材料・荷重変動・疲労・重要度 で決まります。
④ 公差・はめあいの選定理由がない
よくある例
- H7/h6 を「なんとなく」
- すきま量を把握していない
レビューでの指摘
「このはめあいで何μmすきま？」
👉 公差は
組立性・回転精度・コスト に直結します。
⑤ キー溝・段差の応力集中を無視
よくある例
- 軸径計算はOK
- でもキー溝付き
レビューでの指摘
「応力集中係数は考慮した？」
👉 キー溝＝弱点
計算値より実応力は大きくなります。
⑥ 材料特性を「引張強さ」だけで判断
よくある例
- σB だけを見て設計
- 耐力・疲労を考慮していない
レビューでの指摘
「降伏は？疲労は？」
👉 実務では
耐力・疲労限・ばらつき が重要です。
⑦ 加工性・製造性を考えていない
よくある例
- 厳しすぎる公差
- 加工困難な形状
レビューでの指摘
「これ、作れる？」
👉 設計＝製造まで含めた責任
作れない図面はNG です。
⑧ 組立・メンテナンス視点がない
よくある例
- ボルトが工具で締められない
- 分解できない構造
レビューでの指摘
「どうやって組むの？」
👉 組立・整備は
設計段階で決まります。
⑨ 図面間の整合性が取れていない
よくある例
- 組立図と部品図で寸法が違う
- BOMと図面が不一致
レビューでの指摘
「どれが正？」
👉 設計変更時の更新漏れ は重大トラブルになります。
⑩ 設計根拠が説明できない
よくある例
- 「前例があったので」
- 「なんとなく問題なさそう」
レビューでの指摘
「その理由を説明して」
👉 レビューは
設計の“考え方”を見る場 です。
レビューで必ず見られる5つの視点（まとめ）
若手設計者の図面で、
レビュー担当者が必ず見るのは次の5点です。
- 荷重条件は妥当か
- 応力評価は合成で見ているか
- 公差・はめあいの理由は明確か
- 製造・組立を考慮しているか
- 設計根拠を説明できるか
初級者がレベルアップするために
- 計算結果より「前提条件」を重視する
- OK/NGだけでなく「なぜOKか」を説明する
- Excelツールや一覧表を使い、確認漏れを防ぐ
👉 設計ミスの多くは「計算不足」ではなく「確認不足」 です。
「設計ミス10選」チェックリストPDF
ダウンロード：
設計ミス10選チェックリスト（PDF）
内容（抜粋）
- 荷重条件・最大トルクの想定漏れ
- 曲げ＋ねじりの合成評価不足
- 応力集中（キー溝・段差）の見落とし
- 材料強度・安全率の根拠不足
- 疲労・設計変更時の影響範囲未整理 など
→ 印刷してレビュー時にそのまま使用可能。
レビュー用Excelチェック表
ダウンロード：
設計レビュー用チェック表
特徴
- レビュー項目を一覧化（OK/NG・コメント欄付き）
- 若手の自己チェック／上長レビュー双方に対応
- 社内フォーマットに転用しやすいシンプル構成
まとめ
- 初級者の設計ミスはパターン化している
- レビューは「設計の考え方」を見ている
- チェックリスト・計算ツールを活用すると成長が早い
今後も本ブログでは
設計初級者が“レビューで通る設計”を身につけるための実務資料 を発信していきます。
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