キー(平行キー・回り止め)の許容トルク計算|せん断・面圧から安全に設計する方法

キー許容トルク 設計者のためのノート

1. キー(平行キー・回り止め)とは?

キー(Key)は、軸とハブの相対回転を防止し、トルクを伝達する部品です。
歯車、プーリ、スプロケットなどの動力伝達部で広く使用されます。

代表的なキー:

  • 平行キー(JIS B 1301)
  • Woodruffキー(半月キー)
  • スプライン(高トルク用)

本記事では、**最も一般的な「平行キー」**を対象に解説します。


2. キー設計で重要な2つの破壊モード

キーの許容トルクは、次の2つの条件のうち厳しい方で決まります。

① せん断破壊(キーが切れる)

  • トルクによりキーが横方向にせん断される

② 面圧破壊(キー・軸・ハブが潰れる)

  • キー側面と軸/ハブ溝の接触面圧が過大になる

👉 実務では「面圧」で決まるケースが多いのが特徴です。


3. トルクと力の関係

まず、軸に伝達されるトルク TTT と、キーに作用する周方向力 FFF の関係です。F=2TdF = \frac{2T}{d}F=d2T​

  • TTT:伝達トルク [N·mm]
  • ddd:軸径 [mm]

4. せん断応力による許容トルク

■ せん断応力の式

τ=Fbl\tau = \frac{F}{b \cdot l}τ=b⋅lF​

  • τ\tauτ:キーのせん断応力 [MPa]
  • bbb:キー幅 [mm]
  • lll:キー有効長さ [mm]

■ 許容条件

ττ許容\tau \le \tau_{\text{許容}}τ≤τ許容​

👉 材料(S45C 等)に応じて、
一般的には 許容せん断応力 = 引張強さの約0.3~0.4倍 を目安にします。


5. 面圧による許容トルク(重要)

■ 面圧の式

p=F(h/2)lp = \frac{F}{(h/2) \cdot l}p=(h/2)⋅lF​

  • ppp:面圧 [MPa]
  • hhh:キー高さ [mm]
  • 実際に接触するのは 高さの半分(h/2)

■ 許容条件

pp許容p \le p_{\text{許容}}p≤p許容​

  • 一般的な鋼同士の目安
    許容面圧:50~100 MPa(用途・寿命による)

6. 許容トルクの計算式まとめ

① せん断から求める許容トルク

Tshear=τ許容bld2T_{\text{shear}} = \frac{\tau_{\text{許容}} \cdot b \cdot l \cdot d}{2}Tshear​=2τ許容​⋅b⋅l⋅d​

② 面圧から求める許容トルク

Tbearing=p許容(h/2)ld2T_{\text{bearing}} = \frac{p_{\text{許容}} \cdot (h/2) \cdot l \cdot d}{2}Tbearing​=2p許容​⋅(h/2)⋅l⋅d​

👉 最終的な許容トルクは小さい方を採用


7. 計算例(M20相当の軸)

  • 軸径:d=20d = 20d=20 mm
  • 平行キー:6 × 6 mm
  • 有効長さ:l=30l = 30l=30 mm
  • 許容面圧:p=60p = 60p=60 MPa

面圧から:

T=60(6/2)30202=54,000N\cdotpmm=54N\cdotpmT = \frac{60 \cdot (6/2) \cdot 30 \cdot 20}{2} = 54,000 \, \text{N·mm} = 54 \, \text{N·m}T=260⋅(6/2)⋅30⋅20​=54,000N\cdotpmm=54N\cdotpm

👉 このキーの許容トルクは約 54 N·m


8. 実務でよくあるトラブル事例

❌ 事例①:キーが早期摩耗

  • 原因:面圧評価をしていない
  • 対策:キー長さを延ばす or 材質変更

❌ 事例②:軸溝が塑性変形

  • 原因:キー材だけを強化
  • 対策:軸・ハブ側の面圧評価が必須

❌ 事例③:振動でガタ発生

  • 原因:キークリアランス管理不足
  • 対策:公差・面粗さ・締結方法の見直し

9. 設計者向けチェックポイント

✅ トルクは面圧で決まっていないか
✅ キー長さは十分か
✅ 軸・ハブ材質はキーより弱くないか
✅ 繰返し荷重・振動を考慮しているか
✅ スプライン化を検討すべき用途ではないか


10. まとめ

  • キーの許容トルクは
    「せん断」と「面圧」両方で評価する
  • 実務では 面圧が支配的
  • 安全率・寿命・組立性まで含めて設計することが重要

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