✅ 穴基準方式・軸基準方式とは?わかりやすく解説(設計初心者向け)
機械設計では、はめあい(すきま・しまり)を決めるために
「穴基準方式(Hole Basis System)」
「軸基準方式(Shaft Basis System)」
のいずれかを使って寸法を指定します。
どちらの方式を選ぶかで、
- 図面の書き方
- 加工のしやすさ
- コスト
- 精度の出し方
が大きく変わるため、設計の基本として必ず知っておくべき内容です。
🟦 1. 穴基準方式(Hole Basis System)とは?
✔ 穴(内径)の寸法を “基準(固定)” とし、軸側の寸法で、すきま量を調整する方法
もっと簡単に言うと…
穴の寸法はいつも H(=下限が 0)で固定し、軸の公差を変えてはめあいを作る方式
例:
- 穴:H7(基準側)
- 軸:h6 / g6 / f7 …(目的に応じて選ぶ)
🟦 穴基準方式がよく使われる理由(メリット)
① 穴加工のほうが寸法を揃えやすいから
- ドリル、リーマ、ボーリングなど
- 工具の標準サイズが豊富
- 穴の寸法を固定したほうがコストが安く、安定して加工できる
② 組立設計がシンプルになる
穴寸法を固定することで、軸のバリエーションだけ変えればよい。
③ 多くの国際規格(ISO・JIS)が穴基準を標準方式として採用
世界的な“標準”になっている。
🟦 穴基準方式の例(30mm の場合)
| 組み合わせ | 最小すきま | 最大すきま | 用途 |
|---|---|---|---|
| H7/h6 | 0 μm | 30 μm | 一般的なすきまばめ |
| H7/g6 | 4 μm | 43 μm | すきまが大きい用途(回転速度が高い軸など) |
| H7/p6 | しまり | しまり | プレス嵌め |
🟦 穴基準方式の図解(概念イメージ)
穴(H7) ︙ 0 ~ +21 μm ← 固定
軸(h6)︙ -13 ~ 0 μm ← はめあい目的で変える
軸(g6)︙ -20 ~ -7 μm
穴を変えず、軸だけ変えるイメージです。
🟥 2. 軸基準方式(Shaft Basis System)とは?
✔ 軸の寸法を “基準(固定)” として、穴側の寸法で調整する方法
軸を h(=上限が 0)で固定し、穴側の公差を変えてはめあいを作る方式
例:
- 軸:h6(基準側)
- 穴:H7 / G7 / E8 …(目的に応じて変更)
🟥 軸基準方式が採用されるケース
穴加工より軸加工のほうが 基準を保ちやすい 場合。
① 標準軸が既製品で決まっているとき
例:
- モーター軸
- 市販のピン(JIS B 1351)
- 規格品シャフト
既製品の軸径は変更できないため、
穴を調整するしかない → 軸基準方式が有利
② シャフト側の研磨仕上げで精度が確保しやすい場合
細長いシャフトなど、研削加工で軸寸法の精度が高く出る場合。
🟥 軸基準方式の図解(概念イメージ)
軸(h6)︙ -13 ~ 0 μm ← 基準として固定
穴(H7)︙ 0 ~ +21 μm ← はめあいに応じて変更
穴(G7)︙ -4 ~ +12 μm
穴(E7)︙ -14 ~ +4 μm
軸が一定なので、穴側のバリエーションで調整する。
🟩 3. 穴基準方式と軸基準方式の違いまとめ
| 方式 | 何を基準にする? | よく採用される理由 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 穴基準方式 | 穴寸法(H)を固定 | 工具が豊富、加工が安い、標準方式 | 軸受、ブッシュ、ギアボックス |
| 軸基準方式 | 軸寸法(h)を固定 | 規格シャフトがある場合に有利 | ピン、キー、既製軸の取付 |
🧩 4. どちらを使うべき?(設計判断の基準)
✔ 通常は穴基準方式(H7 + 軸側変更)でOK
JIS・ISO も基本は穴基準方式で設計する。
✔ 既製品の軸がある場合は軸基準方式(h6 + 穴側変更)
- ピン
- 軸受部品の既製シャフト
- モーター軸
“どちらの寸法が固定されるべきか?” が選択のポイント。
🧩 5. 実務でよくある判断例
● ベアリングのハウジング側
→ 穴基準方式(H7)で設計することが圧倒的に多い
● シャフトと歯車の圧入
→ s6・r6などの軸側の公差を指定(穴基準方式)
● 市販シャフトに部品を通すだけ
→ 軸基準方式が便利(穴公差を調整)
📝 まとめ(要点)
- 穴基準方式:穴を基準。軸を調整して目的のすきまを得る。
- 軸基準方式:軸を基準。穴を調整して目的のすきまを得る。
- 通常の設計 → 穴基準方式が標準
- 規格軸を使うとき → 軸基準方式が合理的


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