機械設計で頻繁に使用される H7/h6 と H7/g6。
どちらも「はめあい」を表す記号ですが、実際には すきまの大小が違い、用途も異なります。
この記事では、
- 記号の意味(H7・h6・g6 の正体)
- H7/h6 と H7/g6 の“具体的なすきまの差”
- どちらを使うべきか(実務での判断)
- 軸受・ピン・ギアなどでの使い分け例
- 図面での注意点
まで、図解でわかりやすく説明します。
🔍 1. 記号の意味をシンプルに理解する
はめあい記号は 「穴の公差」×「軸の公差」 の組み合わせで構成されています。
✔ H7/h6
- H7:穴の基準位置 H + IT7 等級
- h6:軸の基準位置 h + IT6 等級
✔ H7/g6
- H7:穴の基準位置 H + IT7 等級(同じ)
- g6:軸の基準位置 g + IT6 等級(g は h より上側に位置)
📐 2. 基準位置(H・h・g)の違い
基準位置は、穴と軸のどちらがゼロ線(基準寸法)を跨ぐかを示します。
■ 穴の基準位置(H)
- 下限寸法が基準線に一致
- → “加工しやすく、公差設計しやすい”ため標準
■ 軸の基準位置(h と g)
| 位置 | 基準線との関係 | 特徴 |
|---|---|---|
| h | 上限が基準線に一致 | 穴より小さくなる(すきま方向) |
| g | h よりさらに下(基準よりもっと小) | より大きなすきまが得られる |
👉 つまり g は h より小さい軸
→ 結果として、H7/g6 の方が すきまが大きくなる。
📊 3. H7/h6 と H7/g6 の“すきまの違い”が一目でわかる表
(例:基準寸法 φ30 の場合)
| 組み合わせ | 最小すきま | 最大すきま | 特徴 |
|---|---|---|---|
| H7/h6 | 0 μm | 34 μm | 最も一般的なすきまばめ |
| H7/g6 | 7 μm | 41 μm | より大きなすきまが必要な用途 |
👉 H7/g6 は H7/h6 より “軸が細い” → すきまが大きい。
🧭 4. どちらを使うべき?(設計者の判断基準)
▼ H7/h6 が適する場合
- 軸が“がたつきすぎず”滑らかに回転してほしい
- ベアリング内輪と軸の軽すきまばめ
- 一般的なシャフト・ブッシュでの標準公差
- “迷ったら H7/h6”と言われるほど万能
▼ H7/g6 が適する場合
- H7/h6 だと少しきつい → さらなるクリアランスが必要
- 熱膨張の影響が大きい部品(高温部)
- グリスが入りにくい環境で潤滑に余裕を持たせたい
- 回転ではなく“スムーズな摺動”を重視した軸
🔧 5. 実務での使用例(現場での判断)
■ 【H7/h6】よく使われるケース
- 軸受(ベアリング)の外輪 or 内輪支持
- 歯車軸(中速〜高速回転)
- 各種シャフト・スリーブ
- 高速回転のモータ軸(剛性が必要)
ポイント:
“がたつき少なめ・適度なすきま”を保てる基準。
■ 【H7/g6】が活きるケース
- 一般機械の摺動軸(往復動)
- 長尺シャフト(熱で伸びやすい)
- プーリー軸(高速でない用途)
- 樹脂ブッシュとの組み合わせ
ポイント:
クリアランス増で“焼付き防止・安定動作”がしやすい。
🚫 6. H7/h6 と H7/g6 の“よくある設計ミス”
❌ ① ガタを嫌って無理に h6 を選ぶ
→ 逆に嵌合がきつくなり、組立負荷が上がる場合がある。
❌ ② g6 にすると「精度が落ちる」と誤解する
→ 精度ではなく“すきまの大きさ”が変わっているだけ。
❌ ③ 軸径が長いのに h6 のまま
→ 熱伸びで固着 → 異音 or 摩耗の原因
❌ ④ シャフト材質の違いを考慮しない
S45C・SUS・SCM などで熱膨張係数や加工精度が変わる。
📌 7. 図で見る H7/h6 と H7/g6 の関係(イメージ解説)
H7/h6とH7/g6のすき間比較

🧾 8. まとめ(短く要点整理)
- H7/h6 → 標準的なすきまばめ(迷ったらこれ)
- H7/g6 → もう少しすきまが欲しいときの選択肢
- g6 の方が軸がわずかに細い = すきま大
- 耐熱・摺動・潤滑など“余裕が必要な場面”で g6 が有効
- 回転軸・ベアリング・歯車は基本 H7/h6
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