ベアリング寿命の計算方法と実例|基本式・等価荷重・使用上の注意を徹底解説

ベアリングは機械の回転部分に欠かせない要素ですが、
最も重要なのは 「どのくらいの寿命(L10寿命)を持つか」 を事前に見積もることです。

ベアリング寿命は、メーカーが公開しているカタログ値と
荷重条件・回転速度から計算できます。

この記事では、寿命計算の基本式から、実際の計算例まで
“若手設計者でも即使える形”で分かりやすくまとめます。


1. ベアリング寿命とは(L10寿命)

ベアリング寿命で最もよく使われるのが L10寿命(基本定格寿命) です。

✔ L10寿命とは

同じ条件で複数のベアリングを使用した場合、
90%が破損せずに到達する回転数(または使用時間) のこと。

つまり、

「10個のうち9個は、この寿命までは壊れない」

という統計的な基準で定義された寿命です。

例:

  • L10 = 10,000時間 → 90%が10,000時間以上もつ
  • 設計では通常 L10 を使って安全率をみる

2. 基本となる寿命計算式

◆ 基本定格寿命(L10)の計算式

● 玉軸受(深溝玉軸受など)

L10 = (C / P)³ × 10⁶ 回転

● ころ軸受(円筒ころ・円すいころ軸受など)

L10 = (C / P)¹⁰ᐟ³ × 10⁶ 回転


用語の意味

記号内容
C基本動定格荷重(N)→ カタログ値
P等価動荷重(N)
L10寿命(回転数)
L10h時間寿命(時間)

3. 等価動荷重 P の求め方

実務では必ず “等価動荷重 P” を求めてから寿命計算します。

● 玉軸受の等価動荷重

P = X·Fr + Y·Fa

  • Fr:ラジアル荷重
  • Fa:アキシアル荷重
  • X, Y:メーカー指定係数(荷重比によって変わる)

※ 深溝玉軸受はアキシアル荷重に強く、X=1, Y=0 が使われる場合も多い。


4. 使用時間(L10h)への換算

回転数(min⁻¹)を n とすると、

L10h = L10 / (60·n)


5. 【実務で使える】ベアリング寿命 計算例

以下の条件で寿命を求めます。


例:深溝玉軸受 6205 を使用

  • カタログ値:動定格荷重 C = 14.0 kN(=14000 N)
  • ラジアル荷重:Fr = 600 N
  • アキシアル荷重:Fa = 100 N
  • 回転速度:n = 1200 min⁻¹

Step 1:等価動荷重 P を求める

深溝玉軸受の場合、
Fa/Fr が小さいと X=1, Y=0 で扱えることが多い。

Fa / Fr = 100 / 600 = 0.17 → 小さい
→ よって
P = 1·Fr + 0·Fa = 600 N


Step 2:L10(回転数)を求める

玉軸受は指数 3 を使う。

L10 = (C / P)³ × 10⁶

計算:

C / P = 14000 / 600 ≒ 23.3
(23.3)³ = 23.3 × 23.3 × 23.3 ≒ 12650

よって

L10 = 1.265 × 10⁴ × 10⁶ = 1.265 × 10¹⁰ 回転


Step 3:使用時間(L10h)に変換

L10h = L10 /(60 · n)
= 1.265 × 10¹⁰ /(60×1200)
= 1.265 × 10¹⁰ / 72000
175,000 時間


Step 4:寿命の読み方

175,000 時間を年に換算すると、

175,000 / (24×365) ≒ 20 年


✔ 結果

この条件では、6205のベアリングは約 17〜20年 使用できる(理論寿命)


6. 設計での注意点(非常に重要)

① 寿命はあくまで「理論値」

実際の寿命は環境によって大きく変わる。

② 潤滑状態が寿命に大きく影響

油切れ → 寿命が1/10に低下する場合も。

③ モーメント荷重は別途評価が必要

偏荷重があると寿命は大きく低下。

④ 振動・衝撃荷重は計算に入らない

カタログ寿命は“安定した回転”が前提。

⑤ 温度が高いと寿命は大幅に短くなる

100℃を超える場合は補正が必要。


7. まとめ

  • ベアリング寿命計算は L10 = (C/P)³ ×10⁶ が基本
  • 玉軸受は指数 3、ころ軸受は 10/3
  • 等価動荷重 P を正しく求めることが最重要
  • 回転数が分かれば L10h(時間寿命)へ換算できる
  • 実務では潤滑・温度・振動を考慮して安全率を取る

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